足のむずむず、もしかしたら…?治すチャンスは秋!

「口臭にはりんご」「便秘にはヨーグルト」…でも、それってなぜ?本当に効くの?意味のない対策をがんばっても、本末転倒。ロジックを知って適切に処置すれば、きっと健康に近づくはずです。

理屈を知ってヘルシーに。「科学するからだ」では、科学に基づいた健康になれる方法を探ります。一緒にリサーチしてくださるのは、サイエンスライターの川口さん。

川口友万(サイエンスライター)
サイエンスにもっと笑いを!がモットー。科学をテーマに幅広く扱う。著書に「ラーメンを科学する」「大人の怪しい実験室」など。

今回のテーマは水虫。自分は関係ない…と思っていませんか?意外ですが、特に女性にとって、実は身近な症状なんです。

人に言えない病気は多い。特に水虫は、知られないうちに治したい病気ではないか。特に女性は隠したいだろう。今回は、我々の足をつけ狙う水虫を対策する。

水虫の原因は、足に根付いた「カビ」

水虫のシーズンは5~8月。湿気が多くなると水虫は元気になる。水虫が静かになる秋に、なぜ水虫をとりあげるかといえば、治すには今しかないからだ。毎年水虫が再発する人は、原因となる菌が除去できていないのだ。

水虫の原因となる菌は、カビの仲間だ。カビなので、温かくて湿った場所と時期が好き。だから足の裏に増え、梅雨から夏場にかゆくなる。足の裏は、額の次に汗腺の数が多いため、最適な場所なのだ。

この菌は、角質をエサにする。そして角質の中にどんどん根を張っていくのだ。角質の下には免疫細胞が待機しているので、菌糸が真皮に届くとすぐに攻撃を開始する。これがかゆみや水ぶくれの原因。

薬を塗ればかゆみはおさまる。そのうち夏が過ぎ、いつの間にかかゆみも水虫も忘れてしまう。しかし相手はカビである。角質層の中にずっと潜んでいるのだ。秋になって水虫の活動がおさまると治ったと思いがちだが、翌年またも足がかゆくなり、水虫に悩むことになる。

ハゲと水虫は治らない?

水虫は治らないといわれていた。昔はハゲと水虫と風邪に効く薬を発明したら、ノーベル賞だといわれていたほどだ。ハゲはなぜハゲるのか、そのメカニズムがわかっていなかったし、風邪のようなウイルスが引き起こす病気に効く薬はいまだに開発がむずかしい。では水虫は?

水虫の原因となる菌は、細菌やウイルスに比べると人間の細胞に近い。そのためこれを殺す薬剤は、人間の細胞も傷つけてしまう。この菌の細胞膜は強いので、細菌を殺す程度の殺菌剤では効かない。しかしこれ殺すほど強くしようとすると、強力過ぎて肌の方がやられてしまう。そのため、薬を作用させる経路を変えていかないと危なくて使えないのだ。こうした理由から、薬の開発が難しかった。

いまだに水虫が薬では治らないと思い込んでいる人は多い。お茶で足を洗ったり、木酢やアロエを塗ったり、中には夏の砂浜をはだしで歩いてヤケドさせたり、紫外線ランプで皮膚を焼くものまで、民間療法は山ほどある。

こうした民間療法で治すのは、なかなかにむずかしい。たとえば木酢に殺菌効果があるのは事実だが、医療用の殺菌剤はその1万倍の殺菌力がある。水虫の菌にはまったく効かない。アロエなどの薬草類は、塗り過ぎたり肌に合わずにかぶれがひどくなったりすることが多い。砂浜での殺菌は、そもそも水虫の死滅温度は50~60度であるため、ここまでの高温に足をさらすことはむずかしい。紫外線ランプは発がん性が高く、一度は発売禁止になっている。生兵法は怪我の元どころか、病状をひどくするだけだ。医療の進歩で、現在は水虫を治す薬はあるので、安心してほしい。

実は多い水虫人口

日本の水虫人口は、実は約2000万人もいるそうだ。しかもその半数は女性らしい。意外ではないだろうか。水虫は男性の病気というのは、単にイメージだけである。特に女性の社会進出がすすんで靴をはく時間が長くなってから患者数は増えている。靴をはくと足の湿度や温度が上がって蒸れる。常在菌の生育環境としてよくなり、菌が増加する。

水虫の原因となる菌は接触感染する。空気中にも漂っているが、それが体について増えるということはまずない。一定の湿度と温度があって初めて感染する。女性の場合、スポーツジムやサウナなどのシャワールームや着替えの時のマットレスが感染経路として多い。靴下をはいていても、薄地のものなら通り抜けてしまう。

この菌の増殖は、感染からおよそ24時間後だ。だからそうした場所で感染の可能性があったら、早く足を洗い、乾かせば問題はないのだが、シャワー浴びた後にまたハイヒールをはいてしまう。

ニセ水虫に注意

ちなみに水虫とは別に、水虫に似た症状のニセ水虫「異汗性湿疹」もある。ニセ水虫にいくら水虫の治療をしてもむだだ。素人判断で病状を悪化させる人は多いため、早期の治療を受けた方がいい。

ニセ水虫は、医者にも見た目では区別がつかないが、診断はかんたんだ。患部のひふをピンセットでとり、角質をとかす薬剤を加えて菌の有無を顕微鏡で確認するだけ。だからあやしいと思ったら、すぐに医者にかかるべきだ。

現在、水虫を治す薬は何種類もある。有名なところではルリコンだ。市販薬と医療用の差はほぼないが、市販薬にはかゆみを止める薬や香料が入っているので、肌が弱い人はかぶれるかもしれない。医者に行く時間がなかなかとれない人は、医者に行くまでのつなぎとして、薬局で相談したらいいだろう。

2ヶ月薬を塗り続けることがポイント

そして重要なのが投薬期間。塗り始めたら、何があっても2カ月間続ける。通常1週間でかゆみがおさまるため、そこでやめてしまう人が多い。しかしかゆみがおさまったところでやめてしまうと、菌は角質のなかで休眠するだけだ。最低でも1カ月、できれば2カ月使い続ければ、確実に症状が治まる。この夏、かゆくて困った人は治すのは今。湿度が下がり、繁殖力の下がった今こそ根治させるタイミングである。

ほかにも、菌が爪の間に入る「爪水虫」という爪がボロボロになる病気もある。爪が割れて飛び散るため、感染源が広がってしまう上に治りにくい。かゆみがあまりないので気がつきにくい。恐ろしいことに、頭皮にも感染する。最近、頭に増殖する水虫も流行している。

同じ菌に感染していても、感染場所によって治療薬はちがう。爪水虫は爪の内側に増えるので、塗り薬が効かない。だから飲み薬になる。爪の様子がおかしいと思ったら、ひふ科に相談だ。頭皮の場合は薬用シャンプーを使う必要がある。

来年の夏をさわやかに迎えるためにも、今こそ治療の季節である。