素朴なほど、クセになる。「毎日食べたいおいしさ」のつくり方をシェフに聞いてきました。

東京・池尻大橋のイタリア料理店「ポンテローザ トーキョー」。ベースフードメンバーお気に入りのお店です。ここの魅力は「飽きがこない、何度でも食べたくなる味」。

 

ベースパスタを、毎日でも食べたい「主食」にすべく奮闘している我々。「クセになる味」が何からできているのか気になっていました。その秘密を知って、もっとおいしいベースパスタを提案したい。…ということで、その技を学ぶため、弊社代表の橋本がお店のこだわりを聞いてきました。

もくじ

自然の恵みいっぱい。毎日食べたくなる「南イタリア料理」

橋本 ポンテローザのお料理は、南イタリア料理が中心ですよね。

藤野シェフ そうですね。厳密に決めてはいないですが、南の味が多いです。今年で35歳になるんですけど、振り返ってみると17年間イタリア料理一筋で。ぼくは不器用なので、これしかできないんです。そのなかでも得意なのが南の料理なので、そっちのメニューが中心になっています。


ベースフード橋本(左)と、ポンテローザ藤野シェフ(右)

橋本 南イタリア料理の特徴って、何なんでしょう?

藤野シェフ ぼくが滞在していたプーリア州なんかだと、素材は本当に大事ですよね。旬をいかします。

食べていくうちにまた食べたくなる、毎日でも食べられる味わいが、南イタリアの特徴なんじゃないかな。南イタリアのレストランって、家庭でも出てくるような料理を普通に出すんです。北イタリアは、どちらかというとレストランでしか食べられないもの。

橋本 南イタリアの方が、素朴な家庭の味なんですね。

藤野シェフ 元々、北に比べてお金のない地域なので、チーズをふんだんに使わないとか、トマトは自分で栽培するとか。オリーブオイルも買ってこないで、庭に生えているものを収穫して自家製をつくるとか。

橋本 お金はないけど自然の恵みが多いイメージですね。

藤野シェフ そういう印象はありますね。ただ、ぼく自身が北イタリアにあまり行ったことないので、そちらにいらした方からすると、また違った視点があるかもしれません。

橋本 本当に、ポンテローザさんは毎日でも食べたくなる味なんですよね。どこか懐かしさもあって。


ポンテローザの店内。現地で集めたというインテリアと木目調のテーブルに、温かみを感じます。

藤野シェフ それは嬉しいです。

これだけイタリア料理のお店が増えていくなかで、愛されるお店にするにはどうすればいいかを考えていて。イタリアにいたときに食べたもので印象に残っているのは、やっぱり家で食べたものとか、知り合いのお母ちゃんがつくってくれたものとかで。こういう素直に「おいしいな」と思える味を伝えられればと思っています。

素朴な味ほど、中毒になる

橋本 ポンテローザさんの料理って本当に飽きないし、また食べたいって思っちゃうんですよね。おいしいけど食べ続けると疲れちゃうものもある中で、何が違うんでしょう。

藤野シェフ 昔ながらのシンプルな味つけは心がけてますね。イタリア人って結構、同じものばっかり食べてるんですけど、飽きてないんですよね。そのレシピは、200年くらい前からずっと同じものだったりしていて。

橋本 たしかにシンプル。でも「これを食べにここに来たい」ってなってしまう。良い意味の中毒性。

藤野シェフ 分かりやすい味ほど、中毒になりますよね。ぼくも何となくの感覚でやっているだけなんですけど、シンプルなほど、自分でもできそうなのにできない。だから食べに来る、みたいな。

「人間の原点を感じる味」は、また食べたくなる

藤野シェフ イタリア料理って、余分な味つけをしないんですよ。たとえば、チーズがついたトングでボンゴレを盛り付けようものなら、ぶん殴られるくらい。「ちゃんとチーズを落としてからやれ!」って(笑)。

橋本 日本だと、チーズを何でもぶっかける、みたいなところもあるじゃないですか。つい重ねたくなっちゃう。でも現地では、できるだけ限ってるんですね。

藤野シェフ そうですね。お店でも、極力向こうでやっていることをそのままやろうとしていて。完全にそのまま持って来たら、やっぱり合う合わないがあるので、そこはちゃんと見極めつつですが。

橋本 現地のものが再現されてつくられている。現地の味を知らないぼくが食べても、特別なのがわかる。食材の味が「ちゃんと濃い」なって感じられるんです。

南イタリアのレシピに忠実につくった、少ない食材でつくられた料理って、他と比べて何が違うと思いますか。

藤野シェフ 人間の原点を感じるなと思います。はるか昔、塩すらもなかった時代に感じていたおいしさ=素材を感じる味覚に立ち返るというか。

橋本 「人間の原点を感じる」って、いいですね。たしかにこのお店のお料理を食べていると、「トマトはこんな味だ」「胡椒はこんな味だ」って感じて。ちょっと動物的な感覚を思い出させてくれるというか。その体験をまたしたくなって、来ちゃうんですよね。

藤野シェフ そう言っていただけると、ありがたいです。ずっと料理は進化していくけど、根本は同じなんじゃないかなと考えています。余計な味付けをしないほうが、スムーズに食べられるんじゃないかなって。

橋本 ぼくが何度もこの店に来たくなる理由が分かりました。いまはオフィスが引っ越して少し遠くなってしまったんですが、また食べにきますね!

素材本来のおいしさを教えてくれる店、ポンテローザ。池尻に立ち寄ることがあれば、「人間の原点の味」を感じに足を運んでみては。

藤野シェフには、毎日食べても飽きない「いつもの」ベースパスタレシピも伺っています。詳しくは前編で。

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