2023年4月17日、BASE FOOD 継続コース会員向けアプリ「BASE FOOD ヘルスケア」(iOS版)のβ版がリリースされました。「BASE FOOD ヘルスケア」では、スマートフォンと継続コースの情報をもとに、栄養・身体活動・睡眠の各種データをかんたんに計測・分析することができます。
「ゆるく長くつづけられる健康管理アプリ」というコンセプトのもと、完成までに約2年の時間をかけて開発されました。その間、社内ではさまざまな試行錯誤やハプニング、面白エピソード(?)があったとか。
開発をリードしたエンジニアチームの2名に、アプリリリースまでのお話を聞きました。
高濱 隆輔(たかはま・りゅうすけ)
2021年10月入社。社内ではヘルスケア事業の新規事業企画・開発を担当する。もともとBASE FOODの大ファンで、「BASE FOOD狂信者」と自称するほど。2020年には600食以上を完食。
嶽 雅也(だけ・まさや)
2022年3月入社。高濱とともに新規事業のヘルスケアアプリ開発を担当。IoT分野や機械学習系(ディープラーニング、強化学習)周辺のスキルを伸ばすため、社会人大学院で勉強中。つい最近一児のパパとなった。
栄養・運動・睡眠をかんたんに計測できるアプリで、多くの方の健康に貢献したい
――さっそくですが、アプリ「BASE FOOD ヘルスケア」はどのような目的で開発・リリースされたのでしょうか?
高濱:
ベースフードは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」というミッションを掲げています。「主食をイノベーションする」ことに関しては、手軽で、おいしくて、からだにいい食品をつくることにすでに取り組んできています。しかし、「健康をあたりまえに」するためにできることはまだある。
健康になる・健康にするには、大きく「治療」と「予防」の2種類のアクションがあると僕は考えています。「治療」は身体の状態が悪くなったときにそれを治すこと、「予防」は病気にならないようにすることですよね。わたしたちが取り組むのは、後者の「予防」です。現段階では、お客さまがバランスのよい食事をとって、よりよい栄養状態になるのを助けることで、病気の予防=健康に貢献できているとは思います。
とはいえ、健康というのはやるべきことをあげればキリがないほど、ものすごく広いテーマです。当然、栄養以外にも必要な要素はたくさんあります。そうしたより広い目線で、人々の健康にコミットしていこうという発想で生まれたのが、今回のアプリです。
――実際に、どのぐらいの期間をかけて開発からリリースに至ったのでしょうか?
高濱:
代表の橋本からの提案で企画が立ち上がり、リリースまでには約2年かかりました。
アプリを企画するうえで僕たちが大切にしたのは、ユーザーのみなさまに示す目標を、信頼できる情報源から取得することです。今回参照したのは厚生労働省が発表している「健康日本21」です。「健康日本21」には、厚生労働省が考える「国民の健康の増進の総合的な推進」のためのさまざまな方針が示されています。
その中で、一人ひとりが日常的に意識すべき基準として「栄養・食生活」「身体活動・運動」「休養」の3点が設けられています。「BASE FOOD ヘルスケア」でも、この3要素がスコアで確認できるようにして、理想的な状態と今の状態がどう乖離しているのかを確認できるようにしました。
高濱:
このアプリは、継続コース会員さまなのはもちろん、過去にヘルスケア関係のアプリで挫折してしまった方にも使いやすいUIになっていると思います。
ヘルスケアアプリは、一般的に「自分で食生活を記録する」「運動内容を記録する」「睡眠時間を記録する」など、自発的な行動が必要です。Apple WatchやFitbitといったデバイスを購入して使えば、運動・睡眠の情報は自動で取得できます。ですが、そもそも買うのにお金がかかりますし、これらすべての情報を継続して記録するのは、結構大変だと思うんです。
――わたしも、食事の記録で挫折したひとりです……。
高濱:
ですよね。僕も何度も挫折しています……。スマートウォッチを着け忘れたり、食事の記録をサボってしまったりがつづくと、どうしてもデータが途切れてその後の記録のハードルが上がってしまいます。2023年時点においては、この記録のわずらわしさが継続しづらい環境をつくっている。
このアプリでは、そうしたわずらわしさを一切排除して、なにもしなくても健康情報を記録できる環境をつくろうと考えました。
3つの情報を取得する方法を試行錯誤しつづけた2年間
――たしかに、「BASE FOOD ヘルスケア」は基本的に入力なしで健康情報のスコアが確認できます。どうやってこれらの情報を取得できるのでしょうか?
嶽:
このあたりは2年間で試行錯誤を重ねましたね。
高濱:
「記録する手間は悪」というのを大前提に、栄養・身体活動・睡眠の3つをどう取得するかを考えていきました。
栄養に関しては、継続コースのみなさまが対象ということで、BASE FOODの注文数をもとにおおよその栄養バランスを算出できるという点で解決できました。残りの身体活動・睡眠のうち、運動もiOSが自動で歩数を計測してくれるので、その情報である程度計測できるなと。
問題は睡眠でした。睡眠情報を取得するうえで、デバイスを前提として考えるか、デバイスなしで記録できるような仕組みにするかが大きな問題になったんです。
デバイスありの場合は、高精度なデータを取得できます。しかし、そうなるとユーザーがウェアラブルデバイスを持っていることが前提になります。他社の製品の情報と連携できるようにするか、自社で開発・販売するかという選択がありました。
デバイスなしの前提であれば、基本的にみなさんが持っているスマートフォンで計測することになります。当然、デバイスがない方がユーザーも計測が楽なので、その方向で開発を考えていきました。
デバイスなしの場合だと、いくつかの方法が考えられましたが、どれも情報の精度に問題がありました。あれこれとテストしていく中で、「これならある程度精度が高いな」と思い至ったのが、スマートフォンの「加速度センサー」を用いるという方法です。
――加速度センサー?
高濱:
iPhoneなどのスマートフォンでは、揺れや振動、衝撃を自動で検知・測定する「加速度センサー」という機能があります。基本的に人は寝ているときにはスマートフォンに触れないので、加速度が「ゼロ」になります。加速度のデータを分析することで睡眠時間を推定できるようにしたんです。
この方法も、100%正確な情報を取得できるわけではありません。日中もあまりスマートフォンに触れない方や、寝室にスマートフォンを持ち込まない方の場合、計測の精度は落ちてしまいます。
それでも、テストのなかである程度正しい情報が取得できたことと、デバイスがないほうが多くのユーザーにとって楽だろうということで、この方法を採用しました。今後アプリを通じて集まるデータを参考に、それぞれの情報の精度をどんどん上げていきたいですね。
開発で起きたさまざまな面白ハプニング
――今回のアプリ開発は、高濱さんと嶽さんが中心で取り組んだのですよね。開発中、大変だったことや印象に残っているエピソードはありますか?
嶽:
先ほどの睡眠情報の取得で、昨年夏ごろから社内テストを行っていたんです。わたしの妻にもテストに協力してもらったんですが、実はちょうど同じタイミングで子どもが生まれまして。
わたしも妻も夜泣きのたびに起きていたので、全然正しいデータが取れなかったのを覚えています(笑)。わたしも寝不足が続いたので、開発に迷惑をかけてしまいました……。
高濱:
いやいや!全然そんなことないですよ!
――期せずして、お子さんの誕生でイレギュラーなデータが取れたのですね(笑)。
嶽:
あと、社内テストでは「ウェアラブルデバイスの情報と連携してほしい!」という要望が殺到しました。社員はBASE FOODを常食しているメンバーばかりでみんなとても健康意識が高いので、ほとんどがなんらかのデバイスを活用していたんです。入社してすぐのことだったので、とても印象に残っています。
高濱:
僕がアプリ開発で印象に残っているのは、「これはいける!」という睡眠情報の取得方法を思いついたのに、結果つかえなかったエピソードです。
栄養・身体活動・睡眠のうち、睡眠をどう計測するかで最後まで悩んだというのは、先ほど話したとおりです。ある日、Appleの公式発表を見た嶽さんが、「ユーザーが起動しているアプリの情報を取得する」という方法を提案してくれたんです。
この機能をつかえば、アプリを起動していない時間=睡眠時間としてある程度推計できるんじゃないかと思って。公式からの情報をくまなくチェックしてようやく見つけた方法だったので、ふたりともすごく喜んだんですよ。
嶽:
橋本さんにも、「これでいけます!」と滅多にない発言をしていましたよね(笑)。
高濱:
当時は「天才的なアイデアを見つけました!」って感じでしたから。
ですが、結局この方法はボツになりました。アプリの起動状況を知るには、ペアレンタルコントロール(子どもが持つスマホやパソコンの利用方法を保護者が管理する機能)をオンにしないといけなかったんです。
僕たちがアプリユーザー全員のスマートフォンを保護者として管理するなんて無理ですから。それで、先ほど紹介した加速度センサーを用いての計測方法に落ち着きました。Appleの資料には書いてあったのでよく読めばよかったといえばそれまでなのですが、ためしはじめるまで気づきませんでしたね……。
嶽:
あれだけ自信を持って話していたので、ちょっと悲しかったです(笑)。
アプリ体験をよくするためにもっと進化させていきたい
――4月にリリースしたのはβ版ということですが、今後アプリをどのように進化させていきたいですか?
高濱:
大きくふたつの方向で、アプリの開発を進めていきたいと考えています。
ひとつは、今のアプリにベースフードとの接点・体験を統合していくことです。現在、継続コースのみなさまとベースフードとの接点は、ブラウザ上のマイページになります。この接点がアプリに変わることで、利便性が大きく改善されると思います。
僕は社内メンバーも認めるBASE FOODの超ヘビーユーザーなのですが、いつも現時点で残っている商品数を確認してから、次の定期購入で何個注文するかを決めています。その作業がスマートフォンで今よりもスムーズにできるようになれば、すごく楽になると思うんですよね。
――商品在庫から次の発注分を決める。まるで業者さんですね。
嶽:
高濱さんは本当にすごいんですよ。自宅にコンビニエンスストアで置いているようなラックがあって、そこにBASE FOODを並べているんです。
高濱:
まあ僕の話は置いておいて(笑)。もうひとつは、このアプリを健康にコミットできるアプリにすることです。
今の「BASE FOOD ヘルスケア」ができることは、あくまで習慣をスコアリングすること。スコアリングを通じて実際に健康にいい影響を与えるというところには、まだたどり着いていないと考えています。
ただスコアを出すだけではなく、例えば「体脂肪率を減らしたい」という方にどうすのかといった、スコアを上げるためのモチベーションを高める機能を追加していきたいなと。「ポケモンGO」のように、ゲームを楽しむことでスコアを高めて、健康にも寄与できるといった方向など、いろいろと検討しています。
こうした各機能が追加されれば、「健康をあたりまえに」することができて、日本のヘルスケア事情をより進歩させられると思っています。そこに、ベースフードの食の事業もうまく組み合わせることができれば、三方よしな状態になれるかなと。それが最終的な目標です。
嶽:
まずはベースフードのお客さまにつかっていただいて、そこから徐々に「健康になりたいすべての人」に広げていければと思っています。
ゲームなどモチベーションを高める機能を追加すれば、「健康に意識はあまりなかったけれど、面白そうだからアプリをインストールする」という方を増やせると思っています。そうやって、面白そうという気持ちから健康につなげられる状態をつくれれば、最高ですね。
――BASE FOODをつづけている方も、「おいしいから食べている」という方が多い印象です。「おいしい」から健康につながるのと同じで、アプリも「面白そう」から健康につながるようになれば、とても素敵ですね。
ヘルスケア領域に「苦しみ」と「期待」を持つ人と一緒に働きたい
――アプリの開発をさらに進める上で、チームメンバーも増やしていくのですか?
嶽:
そうですね。先ほど紹介したアプリ開発や機能維持にあたって、直近では2名程度、新たなメンバーを募集する予定です。Android版のリリースの検討も進めているので、その知見を持っている方にもジョインしていただきたいですね。
高濱:
嶽さんの意見とほぼ同じなのですが、ヘルスケア領域に対して「苦しみ」と「期待」の想いを両方もっている方は、アプリチームと非常に相性がいいと思います。
高濱:
「BASE FOOD ヘルスケア」は、ヘルスケアにまつわる「記録の手間」をなるべく除外できるように設計されています。そのため、ヘルスケアに興味があり、かつヘルスケア情報の記録が苦じゃない人にとっては、このアプリはある意味で退屈に感じる気がするんです。
僕たちは、どちらかというとそうではない方々、これまでのヘルスケアアプリで挫折してしまったという人に向けて開発をおこなっています。「いまの技術があれば、もっと楽に健康情報を記録・計測できるはずだ」という考えを持っている方なら、僕たちが目指すところに近いかなと。
嶽:
理想としては、BASE FOODユーザーの方が応募してくださればとも考えています。健康への意識が高い方の方が、日々の開発や「こういう機能を追加したいです」といったやりとりに、よりワクワクできると思います。
ただ、BASE FOODヘビーユーザー度で考えると、僕と高濱さんの中間にいる方が来てくださるとうれしいです。高濱さんばりのヘビーユーザーがこれ以上増えると、テストに支障をきたすので(笑)。
高濱:
「BASE FOOD ヘルスケア」の栄養スコアは継続コースの内容できまりますが、僕の場合ほぼ100点なんです。嶽さんは40点くらいなんですが、スコアの低い方の状況が全然分からなくて……。
嶽:
一般的なユーザーも、スコアはおおよそ40~60点で推移します。高濱さん視点だと「もっと注文すれば解決!」となってしまうので、そのあたりのバランスをとれる人にぜひジョインしてほしいです(笑)。
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